5Vから3.3Vを作るとき、LDOは電力の34%を熱で捨てる|DC-DCとの使い分けを計算で理解する

電子工作やボード設計で必ず出てくる「5Vから3.3Vを作る」という場面。三端子レギュレータ(LDO)を挿して終わり、にしがちですが、そのときLDOが電力の34%を熱として捨てていることは意外と意識されません。LDOと降圧DC-DCコンバータの使い分けを、計算で確認します。

先に結論

  • LDOの効率は Vout ÷ Vin で確定する。回路の工夫では改善できない
  • 5V→3.3Vなら34%が熱。12V→3.3Vなら72.5%が熱になる
  • 5V→3.3Vの1AはSOT-223でギリギリ、12V→3.3Vは小型パッケージでは成立しない
  • ただし3.7V→3.3VならDC-DCにしても電池寿命はほぼ変わらない(後述の計算)
  • μAオーダーの待機が長い機器では、LDOのほうが電池が3倍持つケースがある

LDOの効率は「電圧比」で決まる

LDO(リニアレギュレータ)は、余分な電圧を内部の素子で熱に変えて落とす仕組みです。入出力の電流はほぼ同じなので、効率は原理的にこうなります:

η(LDO) ≒ Vout / Vin  (自己消費電流を無視した理想値)

つまり回路の工夫では改善できず、電圧の組み合わせを決めた瞬間に効率が確定します。ここがスイッチング方式との決定的な違いです。

変換 LDO効率(理想) 捨てる電力の割合 典型的な用途
3.7V(Li-ion)→ 3.3V 89% 11% 電池駆動機器
5V → 3.3V 66% 34% USB給電・Arduino系
9V → 3.3V 36.7% 63.3% 006P電池
12V → 3.3V 27.5% 72.5% 車載・産業機器
24V → 3.3V 13.7% 86.3% FA機器
3.3V出力時の入力電圧に対するLDOとDC-DCの効率比較グラフ。LDOは入力電圧に反比例して効率が落ちる
3.3V出力時の効率。LDOは入力電圧が上がるほど直線的に悪化し、DC-DCはほぼ一定

「効率が悪い」の実害は発熱で見る

効率の数字だけではピンと来ないので、発熱に換算します。5V→3.3Vで1A流す場合:

P(損失) = (Vin − Vout) × I = (5 − 3.3) × 1 = 1.7W

この1.7Wを、よくあるSOT-223パッケージ(熱抵抗θJA≒60℃/W前後、基板条件による)で処理すると、温度上昇は計算上約100℃。周囲温度25℃でもジャンクションは125℃近くに達し、定格ぎりぎりです。つまり5V→3.3V・1AはLDOにとって「動くけれど設計としては崖っぷち」の領域で、12V入力に至っては小型パッケージでは物理的に成立しません。

熱抵抗θJAとθJCの違いを押さえる

データシートには2種類の熱抵抗が載っています。これを取り違えると計算が丸ごとずれます。

記号 意味 使いどころ
θJA (θJ-A) ジャンクション→周囲空気 放熱器なしで基板に実装する場合。今回の計算はこちら
θJC (θJ-C) ジャンクション→パッケージ表面(ケース) 放熱器を付ける場合。θJC + θCS + θSA で合計する

注意すべきは、θJAが基板の銅箔面積で大きく変わることです。データシートのθJAは「JEDEC規定の測定基板」での値で、実際のあなたの基板とは一致しません。銅箔をケチると実測は容易に1.5〜2倍悪化します。ここは必ず使用するデバイスのデータシートで確認してください。

放熱器なしで流せる電流の早見表

ジャンクション温度の上限を125℃、周囲温度25℃(=許容温度上昇100℃)としたときの、放熱器なしで流せる最大電流を計算しました。

P(許容) = ΔT(100℃) ÷ θJA
I(最大)  = P(許容) ÷ (Vin − Vout)
パッケージ (θJA目安) 許容損失 3.7V→3.3V 5V→3.3V 12V→3.3V
SOT-23-5 (250℃/W) 0.40W 1.00 A 0.24 A 0.046 A
SOT-89 (140℃/W) 0.71W 1.79 A 0.42 A 0.082 A
SOT-223 (60℃/W) 1.67W 4.17 A 0.98 A 0.19 A
TO-252/DPAK (50℃/W) 2.00W 5.00 A 1.18 A 0.23 A
TO-220 放熱器なし (62℃/W) 1.61W 4.03 A 0.95 A 0.19 A
TO-220 + 放熱器 (合計10℃/W) 10.0W 25.0 A ※ 5.88 A 1.15 A

※ 素子自体の定格電流が先に効くため、実際にはデバイスの最大出力電流で頭打ちになります。
※ θJAはパッケージの代表値です。実設計では必ずデータシートの値と、自分の基板の銅箔条件で再計算してください。
※ 周囲温度が25℃より高い環境(筐体内など)では、その分ΔTが減るので許容電流も下がります。40℃環境なら上表の85%程度が目安です。

この表から読み取れる要点は3つです。

  1. 5V→3.3Vで「1A欲しい」なら、SOT-23やSOT-89は選択肢にならない。0.24Aや0.42Aで頭打ちになる
  2. 12V→3.3Vは、TO-220に放熱器を付けても1.15A。LDOで扱う領域ではない
  3. 3.7V→3.3Vなら小さいパッケージでも1A流せる。電圧差が小さければLDOは十分実用的

ではDC-DC一択なのか?——LDOが勝つ場面

降圧DC-DC(スイッチングレギュレータ)はエネルギーをインダクタに蓄えて移し替える方式で、効率は実用品で85〜95%程度、入力電圧にほぼ依存しません。それでもLDOが選ばれ続けるのには理由があります:

観点 LDO 降圧DC-DC
効率 Vout/Vinで確定(電圧差が小さいときのみ良好) ◎ 85〜95%、電圧差に鈍感
ノイズ ◎ スイッチングノイズなし。アナログ・RF・ADCの電源に最適 スイッチング周波数のリップルが乗る
部品点数・コスト ◎ 本体+コンデンサ2個 インダクタ+ダイオード等が必要、レイアウト設計も効く
軽負荷(μA級待機) ◎ 自己消費の小さい品種が豊富 軽負荷効率が落ちる品種がある
応答速度 ◎ 負荷変動への追従が速い 制御ループの帯域に律速される
基板面積 ◎ 小さい インダクタの体積が効く

実務の定石は「大きく落とすのはDC-DC、最後の仕上げはLDO」の2段構成です。例えば12V→3.6VをDC-DCで落とし(効率90%)、3.6V→3.3Vの最終段をLDOで受ける構成にすると、全体効率は次のようになります。

2段構成: 0.90 × (3.3 ÷ 3.6) = 0.825 → 約83%
LDO単独: 3.3 ÷ 12 = 0.275 → 約28%

効率は3倍、発熱は約1/8。そのうえ最終段がLDOなので、DC-DCのスイッチングノイズも落とせます。ADCやRFを載せる基板でこの構成が定番になっているのは、効率とノイズを同時に取れるからです。

電池駆動での実害を計算する

発熱よりも切実なのが電池の持ちです。3つのケースで計算しました。

ケース1:Li-ion 1セル(3.7V / 2000mAh = 7.4Wh)から3.3V・200mAを取る

方式 効率 電池側の消費電力 連続駆動時間
LDO 89% 0.74 W 約10.0時間
DC-DC (90%) 90% 0.73 W 約10.1時間

差はわずか1%。 ここが見落とされがちな点で、リチウムイオン1セルから3.3Vを作る場合、DC-DCに置き換えても電池寿命はほとんど改善しません。部品点数とノイズを考えれば、LDOのほうが合理的です。

ケース2:12V(2000mAh = 24Wh)から3.3V・200mAを取る

方式 効率 電池側の消費電力 連続駆動時間
LDO 27.5% 2.40 W 約10.0時間
DC-DC (90%) 90% 0.73 W 約32.7時間

3.3倍の差。 電圧差が大きいときは、DC-DCにする価値が明確に出ます。ケース1とケース2で結論が正反対になるのが、この問題の本質です。

ケース3:待機時間が支配的なセンサノード

1時間に1秒だけ50mAで動作し、残り3599秒はMCUが10μAでスリープする機器を考えます。レギュレータ自身の自己消費電流(Iq)を、LDOは1μA、DC-DCは50μAとします。

LDO   : (50mA×1s + 0.011mA×3599s) ÷ 3600s ≒ 24.9 μA
DC-DC : (55.6mA×1s + 0.060mA×3599s) ÷ 3600s ≒ 75.4 μA
方式 平均消費電流 2000mAh電池での寿命(計算値)
LDO (Iq=1μA) 24.9 μA 約9.2年
DC-DC (Iq=50μA) 75.4 μA 約3.0年

効率の良いはずのDC-DCのほうが、電池寿命は1/3になりました。 動作時間が短く待機が支配的な機器では、変換効率よりも自己消費電流のほうが効くためです。なお実際には電池の自己放電が効いてくるので、9.2年がそのまま出るわけではありません。それでも「軽負荷ならLDOが有利」という順序は変わりません

選定の判断フロー

ここまでの計算を、判断手順に落とします。

  1. 損失を計算する — P = (Vin − Vout) × I(最大)
  2. 許容損失と比べる — P(許容) = (Tj最大 − 周囲温度) ÷ θJA
    P > P(許容) なら、その時点でLDO単独は不可
  3. 電池駆動か確認する — 電圧差が大きい(効率50%未満)ならDC-DCへ
  4. 待機が支配的か確認する — Yesなら自己消費電流で選ぶ。LDOが有利になりやすい
  5. ノイズに敏感な負荷があるか — ADC・RF・オーディオがあるなら、DC-DC + LDOの2段構成を検討

よくある誤解

「低ドロップアウト(LDO)だから効率が良い」——違います

「Low Drop-Out」が指すのは入出力電圧差をどこまで詰められるかであって、効率そのものではありません。ドロップアウト電圧0.1VのLDOでも、12V入力で3.3Vを作れば効率は27.5%です。低ドロップアウト品の価値は、電池が消耗してVinが下がっても出力を維持できる点にあります。

「放熱器を付ければ解決する」——電池駆動では解決しません

放熱器が解決するのは温度の問題だけで、捨てている電力量は1Wも減りません。コンセント給電なら発熱対策だけで済みますが、電池駆動では放熱器は無意味です。

「効率が良いほうが常に正しい」——ケース3が反例です

変換効率は「動作中」の指標です。動作時間が全体の0.03%しかない機器では、支配的なのは待機電流のほうでした。何が支配的かを先に決めてから、指標を選ぶのが順序です。

まとめ

  • LDOの効率は Vout ÷ Vin。5V→3.3Vで34%、12V→3.3Vで72.5%が熱になる
  • 放熱器なしの許容電流は、5V→3.3VでSOT-23なら0.24A、SOT-223でも0.98Aが上限
  • 12V→3.3VはLDO単独では成立しない。DC-DC + LDOの2段構成で効率28%→83%
  • ただし3.7V→3.3VはDC-DCにしても電池寿命がほぼ変わらない(差1%)
  • 待機が支配的な機器では、自己消費電流の小さいLDOのほうが電池が3倍持つ

「LDOは効率が悪いからDC-DC」と一般化せず、電圧差・電流・待機比率の3つを見て決めるのが正解でした。

本記事の数値はすべて計算値です。熱抵抗θJAはパッケージの代表値を用いており、実際の基板条件で変動します。設計時は必ず使用するデバイスのデータシートの値で再計算してください。

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