EAを24時間動かすなら自宅PCの分岐点は約96W|電気代とVPS月額を公式単価で計算した

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MT5でEAを回し始めると、最初にぶつかるのが「自宅のPCを24時間点けっぱなしにするか、VPSを借りるか」という選択です。ネット上では「電気代よりVPSのほうが安い」と書かれることもあれば、逆の主張も見かけます。どちらが正しいかは、PCの消費電力と、電気の単価をどう取るかで決まります。

この記事では、電力会社の公式単価とVPS各社の公式料金表だけを使って、「自宅PCの消費電力が何Wを超えたらVPSのほうが安くなるか」という分岐点をW単位で計算しました。計算はすべてPythonで検算しています。なお、本記事の数値は公称値・公表単価にもとづく計算値であり、ワットチェッカーによる実測値ではありません。この区別は本文中でも都度明記します。

先に結論

  • 24時間×30日=720時間の連続運転で、消費電力1Wあたりの電気代は月32.16円(東京電力 従量電灯B 第3段階40.49円/kWh+再エネ賦課金4.18円/kWh=44.67円/kWhで計算)。目安単価31円/kWhなら月22.32円(計算値)。
  • FX向けVPSの最安クラス(お名前.com デスクトップクラウド 2GB、サービス維持調整費17%込みで月3,089円)と釣り合う自宅PCの消費電力は約96W。目安単価31円/kWhで計算すると約138W(計算値)。
  • つまりミニPCやノートPC(15〜25W級)で足りる規模なら、電気代は月482〜804円で、金額だけ見れば自宅PCが圧倒的に安い。VPSとの差額は年3万円前後になる(計算値)。
  • それでもVPSが選ばれるのは、差額で買っているのが計算能力ではなく「止まらないこと」だから。SLA99.99%の許容停止は月4.32分で、自宅PCはWindows Updateの再起動1回(10分)だけでこれを超える(計算値)。
  • 判断は「電気代の比較」ではなく「年に何回・何時間の停止を許容できるか」で行うほうが筋が通る。

本記事でVPS側の代表として条件を確認したのは XServer VPS for FX プレミアム(FX自動売買専用・リソース専有型。MT4/MT5を20〜25個動かす規模を想定したプレミアムプランは月額32,000円/1ヶ月契約、2026年9月23日時点の公式掲載値)です。価格帯の異なる選択肢は本文の比較表にまとめました。

計算の条件(先に前提を開示する)

この種の試算は前提でいくらでも結論が変わります。使った数字と出典を先に出します。

項目 値 出典・根拠
稼働時間 24時間×30日=720時間/月 本記事の設定(1か月を30日として換算)
電力量料金(限界単価) 40.49円/kWh(税込) 東京電力エナジーパートナー 従量電灯B 第3段階料金(300kWh超過分)
再エネ賦課金 4.18円/kWh 経済産業省 2026年度賦課金単価(2026年5月検針分〜2027年4月検針分に適用)
合計(限界単価) 44.67円/kWh 上記2つの合計(計算値)
比較用の目安単価 31円/kWh(税込) 全国家庭電気製品公正取引協議会「電力料金の目安単価」(令和4年7月22日改定)
PCの消費電力 15W/25W/60W/100Wの4ケース 公称値ベースの仮定。実測ではない
VPS料金 各社公式サイトの掲載値 2026年9月23日時点。記事末尾に出典URL

ここでひとつ重要な点があります。電気代の試算でよく使われる31円/kWhは全国平均の目安単価ですが、「すでに電気を使っている家庭が、そこにPCを1台追加する」場合に効いてくるのは平均単価ではなく限界単価です。従量電灯Bは三段階料金なので、月300kWhを超えて使っている家庭では、追加分はすべて第3段階の40.49円/kWhで課金されます。ここに再エネ賦課金4.18円/kWhが加わるため、実質は44.67円/kWh。目安単価で計算すると電気代を3割ほど過小評価することになります。

自宅PCの電気代は消費電力に比例する(計算値)

720時間/月の連続運転で、消費電力別の電気代を計算しました。

消費電力 月間電力量 電気代/月(限界単価44.67円) 電気代/月(目安単価31円) 電気代/年(限界単価)
15W(省電力ミニPC級) 10.8kWh 482円 335円 5,789円
25W(ノートPC常時稼働級) 18.0kWh 804円 558円 9,649円
45W 32.4kWh 1,447円 1,004円 17,368円
60W(小型デスクトップ級) 43.2kWh 1,930円 1,339円 23,157円
80W 57.6kWh 2,573円 1,786円 30,876円
100W(一般的なデスクトップ級) 72.0kWh 3,216円 2,232円 38,595円
150W 108.0kWh 4,824円 3,348円 57,892円

覚えておくと早いのは「1Wあたり月32円」という係数です(限界単価44.67円/kWhの場合。目安単価なら月22円)。消費電力にこれを掛けるだけで月額が出ます。60Wなら60×32.16=1,930円。

なお、消費電力の値は公称値やカテゴリごとの代表値であって、実測ではありません。MT5は常時チャートを更新し、EAの種類によってはCPU負荷も上下するため、アイドル時の公称値より上に振れます。消費電力を正確に知るには、ワットチェッカーでコンセント側の実測を取る必要があります。機器の消費電力から使用量を積み上げる考え方はポータブル電源の容量計算の記事でも同じ形で扱っています。

FX向けVPSの実勢価格(2026年9月時点の公式掲載値)

比較対象として、FX自動売買でよく候補に挙がるサービスの公式掲載価格を並べます。価格はいずれも2026年9月23日時点の各社公式サイトの表記で、キャンペーンや改定で変わります。

サービス/プラン メモリ 月額(公式表記) 追加費用 実質の月額 MT4/MT5推奨数
お名前.com デスクトップクラウド StartUp 2GB 2GB 2,640円 サービス維持調整費17.0%/初月1,100円 3,089円 3個
お名前.com デスクトップクラウド Standard 4GB 4GB 4,620円 同上 5,405円 8個
ConoHa for Windows Server 1GB(36ヶ月) 1GB 1,239円 リモートデスクトップSAL 1,386円/月が必須 2,625円 記載なし
ConoHa for Windows Server 2GB(36ヶ月) 2GB 2,277円 同上 3,663円 記載なし
XServer VPS for FX プレミアム Light(1ヶ月契約) 10GB 9,801円 維持調整費なし/最低利用期間3ヶ月 9,801円 5〜7個
XServer VPS for FX プレミアム Premium(1ヶ月契約) 48GB 32,000円 同上 32,000円 20〜25個
XServer VPS for FX プレミアム Premium(12ヶ月契約) 48GB 29,440円 一括前払い 29,440円 20〜25個

価格表を読むときに見落としやすいのが、月額の横に書かれていない費用です。お名前.comは本体価格とは別に「サービス維持調整費17.0%(2024年12月1日〜)」が請求される旨を明記しており、2,640円のプランは実質3,089円になります。ConoHaでWindows環境を使う場合は、VPS料金のほかにリモートデスクトップSAL(月1,386円)が必要で、1GBプランなら本体1,239円よりライセンス料のほうが高くなります。XServer VPS for FX プレミアムは「維持調整費など追加料金のないシンプルな料金体系です」と明記し、RDS SALも「かかりません」としていますが、その分もともとの月額が上の価格帯にあります。

横並びで比べるなら、公式ページの一番大きい数字ではなく「調整費・ライセンス料まで足した実質の月額」で揃える必要があります。

分岐点:何ワットからVPSのほうが安いのか

実質月額を「1Wあたり月32.16円(限界単価)/22.32円(目安単価)」で割ると、それぞれのVPSと電気代が釣り合う消費電力が出ます。

VPS(実質月額) 分岐点(限界単価44.67円/kWh) 分岐点(目安単価31円/kWh)
ConoHa for Windows 1GB+SAL(2,625円) 81.6W 117.6W
お名前.com 2GB(3,089円) 96.0W 138.4W
ConoHa for Windows 2GB+SAL(3,663円) 113.9W 164.1W
お名前.com 4GB(5,405円) 168.1W 242.2W
XServer VPS for FX Light(9,801円) 304.7W 439.1W
XServer VPS for FX Premium(32,000円) 995.0W 1,433.7W

読み方はこうなります。自宅PCの消費電力が96Wを超えるなら、最安クラスのVPSより電気代のほうが高い(限界単価で計算した場合)。逆に、EAを数個動かすだけで15〜25W級のミニPCやノートPCで足りるなら、電気代は月482〜804円で、VPS代3,089円との差額は月2,285〜2,607円、年に換算して2万7千円〜3万1千円になります(計算値)。

「ゲーミングPCでEAを動かしている」というケースは要注意で、アイドルでも80〜100W、EAとチャートを多数開けばさらに上がります。この領域ではVPSのほうが安くなる可能性が十分にあります。自分のPCが何Wなのかを知らないまま比較しても答えは出ません。

3年総額で見ると順位が変わる

月額だけだと、PC本体の購入費が抜け落ちます。EA専用にミニPCを1台買う前提(仮に本体3万円・3年使用とした場合)で、3年総額を計算しました。本体価格は特定製品の価格ではなく、計算のための仮定値です。

構成 3年総額(計算値) 内訳
自宅ミニPC 15W 47,368円 本体30,000円+電気代17,368円
自宅ミニPC 25W 58,946円 本体30,000円+電気代28,946円
自宅デスクトップ 60W 99,471円 本体30,000円+電気代69,471円
ConoHa for Windows 1GB+SAL 94,500円 2,625円×36ヶ月
お名前.com 2GB 112,297円 3,088.8円×36ヶ月+初月1,100円

3年で見ると、省電力なミニPCを買って自宅で回す構成はVPSの半額以下に収まります。一方で60W級のデスクトップを流用すると、3年でVPSとほぼ並びます。「手元にあるPCを流用する=タダ」ではないというのが、この表から読み取れることです。

電気代では測れない差 ―― 稼働率

ここまでは金額の話ですが、EA運用で本当に効いてくるのは停止時間です。MetaQuotesの公式ヘルプでは、トレーディングロボット(EA)を停止させる方法の一つとして “Turn off the trading platform;”(取引プラットフォームを終了する)が挙げられており、MT5のターミナルが落ちればEAも動かないことが前提になっています。同社の仮想ホスティングの説明でも “All these cases require constant connection to a trade server and uninterrupted power supply.”(これらのケースはいずれも、取引サーバーへの常時接続と途切れない電源供給を必要とする)と書かれています。

停止時間を稼働率に換算すると、感覚と数字のずれが見えます。1か月=43,200分として計算しました。

できごと 停止時間 月間稼働率(計算値)
SLA 99.99% の許容停止 4.32分 99.9900%
Windows Updateの再起動 1回 10分 99.9769%
瞬停+起動待ち 15分 99.9653%
夏の停電 120分 99.7222%
帰省・旅行中の回線断 360分 99.1667%

XServer VPS for FX プレミアムは月間稼働率99.99%以上を基準としたSLAを掲げています。これは月あたりの許容停止が4.32分という水準で、自宅PCは月1回のWindows Update再起動だけでこの基準を超えます。さらに自宅環境には、停電、ブレーカー落ち、回線工事、ルーターの再起動、掃除中のコンセント抜けといった、SLAでは表現されない停止要因が加わります。

もっとも、停止が損失にどう結び付くかはEAのロジック次第です。ポジションを持ち越さないEAなら停止中は機会が消えるだけですが、ポジション保有中に停止すれば決済ロジックが働きません。停止のリスクをどう見積もるかは、EAの資金管理設計と切り離せない問題で、ロット設計の考え方は破産確率とロット計算の記事で扱っています。

判断のための3つの質問

金額の比較は上の表で終わりです。そのうえで、自分の条件に当てはめる質問を3つ挙げます。

  1. 自分のPCは何Wか。 これが分からないと比較は始まりません。ワットチェッカーをコンセントに挟んでMT5稼働中の値を読むのが確実です。96W(または目安単価なら138W)が一つの目安になります。
  2. 年に何時間の停止まで許容できるか。 許容できる停止時間が短いほど、月3,000円前後の差額は「保険料」として説明が付きます。逆に、停止しても取り返しがつく運用なら、差額は単純な追加コストになります。
  3. EAを何個動かすか。 1〜3個なら最安クラスのVPSでも公式の推奨個数に収まります。10個、20個と増やすなら、メモリとCPUを専有できる上位プランが必要になり、価格帯が一段変わります。

この3つに答えると、「電気代が安いほうを選ぶ」という問いが、「どこまでの停止を許容するか」という問いに置き換わります。金額だけで決められる問題ではない、というのがこの計算から出てくる結論です。

まとめ

  • 24時間運転の電気代は1Wあたり月32.16円(限界単価44.67円/kWh)。目安単価31円/kWhなら月22.32円(計算値)。
  • 最安クラスのFX向けVPS(実質3,089円/月)との分岐点は約96W。目安単価で計算すると約138W(計算値)。
  • 15〜25W級のミニPCで足りるなら電気代は月482〜804円で、金額では自宅PCが有利。差額は年3万円前後(計算値)。
  • VPSの価格は「月額の表示」ではなく維持調整費・RDSライセンスまで足した実質額で比較する。
  • 稼働率で見ると、SLA99.99%の許容停止は月4.32分。自宅PCはWindows Updateの再起動1回で超える(計算値)。

本記事の数値はすべて公表単価・公称値にもとづく計算値です。実際の電気代は契約プラン・使用量・燃料費調整額・各種値引きによって変わり、VPS料金は改定されます。導入前に各社の公式ページで最新の条件を確認してください。

この記事の検証環境

  • 計算に使った電力単価:東京電力エナジーパートナー 従量電灯B 第3段階 40.49円/kWh(税込)+再生可能エネルギー発電促進賦課金 4.18円/kWh(2026年度)/比較用に全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価 31円/kWh
  • 比較したVPS(いずれも2026年9月時点の公式掲載価格):XServer VPS for FX プレミアム(Windows Server 2025・リソース専有・SLA月間稼働率99.99%以上)/ConoHa for Windows Server(別途リモートデスクトップSAL 1,386円/月)/お名前.com デスクトップクラウド(Windows Server 2019・サービス維持調整費17.0%)
  • 計算環境:Python 3.11 で全数値を検算。稼働時間は24時間×30日=720時間/月、1か月=43,200分として計算
  • この記事に実測値は含まれません。 PCの消費電力(15W/25W/60W/100W)とミニPC本体価格(30,000円)は計算のための仮定値であり、ワットチェッカーによる実測、特定製品の実売価格ではありません

出典

【免責】本記事は電気料金とVPS料金の計算結果を示したものであり、特定のサービスの利用や投資判断を推奨するものではありません。EAの運用成績や検証結果は将来の成果を保証しません。取引に関する判断はご自身の責任で行ってください。価格・料率・仕様は各社の改定により変わるため、契約前に必ず公式ページでご確認ください。

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